EdTechで中高生のキャリア選択に変革を。「情報格差」を解消し、誰もが自分の可能性を追求できる社会へ。

2020.02.10 / ニュース

武川 誠

新卒にてエンジニアとしてキャリアをスタート。飲食店予約サイトなど大規模Webサービスをメインエンジニアとして複数開発する。2015年に総合PR大手のベクトルグループへ入社。Webディレクターとして、ナショナルクライアントのPRをプランニングし数々のプロモーションを成功に導く。2018年からベクトルグループの新規事業として、世界初となるエンタメサービスのプロダクト責任者を担当。

中高生の自己認知力を高め、早期にキャリア形成の意識を育む

武川 誠

―― 現在開発中のサービスについて教えていただけますでしょうか。

現在高校生をターゲットとして2つのサービスを開発しています。

ひとつがSaaS。今までは偏差値を軸に進路を決めていたと思いますが、偏差値だけではなく「非認知能力」「コンピテンシー」を把握し、それを元に進路を考えられるようにできたらと考えています。こちらは高校生本人だけでなく、学校の先生もターゲットとして考えています。

もうひとつがメディアです。こちらは中高校生をターゲットとしています。これまで高校生って、政治や経済のことをあんまり知らなかったと思います。わかりやすく「風刺コンテンツ」として、手に取りやすい形で提供して、興味が持てるようにしていけるWebメディアを作っています。

SaaSに関しては、ご両親にもかなり興味をもっていただけるかと思っています。自分の子供の非認知能力って、おそらく把握している人は少ない。もちろん本人は自分のことを知りたいと思いますが、ご両親はさらに熱心かなと。

―― どうして教育分野でサービスを作ろうと思ったのですか?

キャリア形成においては情報格差が深刻な課題で、地方と都市部の情報格差を解消する鍵となるのが、教育事業だと考えたからです。

僕は長崎出身で上京しました。長崎って東京に比べるとやっぱり入ってくる情報が非常に少ない。たとえば長崎にいると、GMOとか電通とかって何をやっている会社なのかわからない。

僕自身の経験からなのですが、「情報格差」に起因すると考えています。東京にでてくる時に、どういう会社かというのが本当にわからなかった。一番最初に入社したのが大手PR会社。自分がやりたいと思った分野ではありますが、仕事内容を入社前にちゃんと理解できていたわけではなかったんです(笑)。

入社前から自分が向いている会社や仕事がわかれば良いなと。大学生の頃から考えるのは少し遅いなと思っています。私の場合は良い経験ができましたが、場合によっては悲劇を生んでしまうこともある。

大学生、社会人になってしまってから後悔することがないよう、情報格差を解消するために教育業界を変えるのが最も手っ取り早いかと思いました。そんなことを考えていた時に、ちょうど山崎が教育事業の構想を話してくれたんです。

―― 共同創業者の山崎さんと出逢いについて教えてください。

山崎とはまだPR会社に勤めていた時に、仕事上の接点があって知り合いました。教育事業の構想を山崎が話してくれて、僕が「だったらこうしたらもっとおもしろいかも...」と話しているうちにトントン仕事が進んでいって。

いま日本って何も考えずに大学に通う人が多いこと。たとえば東大にいってもニートの人は珍しくないですよね。受験をクリアすることが目的化していて、合格したら卒業することが次のゴールになって......と、理由を持って大学に進学する人が少ない。

その点でお互いの認識が合っていることが、話していてわかったんです。口説かれたというよりは、共感から自然な成り行きで始まりましたね。

最初から完璧を目指さない。開発を加速させつつ、リーダーシップのあるサービスづくりを。

武川 誠

―― サービスを作る上で大切にしていることは何ですか?

最初から綺麗で完璧に近いものを作ろうとしないことですね。触ってもらわないと正直わからない。時間をかけて作ってもユーザーが使わないものを作っても仕方ないですし、開発にかけたリソースも無駄になってしまいます。

素早く良いものをつくるためにも、開発の初期段階からユーザーからフィードバックをもらえる機会を作って、真摯に受け止めるようにしようと。プロダクトをつくる上で一番大切にしていることですね。まずは高校に導入したいので、生徒と先生、両方に使用感をヒヤリングできたらと考えています。

―― スピード感を意識するようになったきっかけはなんだったんですか?

以前勤めていた会社で仕様をまとめた提案書を書いていました。いつもできるだけ完璧な状態に仕上げてから、上司に見せるようにしていたんです。でもどんなに完璧に仕上げたつもりでも、フィードバックは返ってくるんですよね。やり直しとなると余計な時間もかかってしまいます。

それならまず、仕様の概要だけ作って見せてフィードバックをもらう。開発のフェーズに入っても、コア機能だけ作って、作り込みは後からでも良い。そんな風に進め方を変えてから、ものすごくスムーズに進むようになったんです。

結果として当初仕様つくるのに1ヶ月ほどかけていましたが、今思うと1ヶ月あったらα版くらい作れます(笑)。大きな学びでした。

―― 他に大切にしていることは何かありますか?

サービスづくりで大切にしているのは、「ユーザーが自分で意思決定できること」です。

現在コンピテンシーのスコアリングを進めていますが、スコアリングしたからといって、こちらのサービスから「あなたは〇〇の仕事に適しているから、〇〇をしなさい」と判定するためではありません。あくまで自分の適性について理解を深めてもらうためのものです。

意思決定するための情報を知らない、あるいは足りていないから、職業選択の意思決定に無関心な人や苦労する人が多くなってしまうことはお話しましたよね。

結局僕たちで判定して「〇〇の仕事をしなさい」と言ってしまうと、結局のところ自分で判断しているとは言えず、課題は解消されません。あくまで自分で判断できるためのサービスであることを、機能開発する際にも念頭においていますね。

―― いま数値化については、どの程度進んでいるのでしょうか。

コンピテンシーを数値化するためのアンケートはできていて、実際に数値化もできます。あとはデータを集めていくところですね。すでに高い精度の回答結果が得られることが確認できています。

アンケートの実施方法としては、現在その職業で働いている人と高校生向けにそれぞれアンケートをとっています。社会人が適性診断を受ける機会は多いと思うのですが、学生だとほとんどない。興味がある高校生は多いみたいですが......。

大学入ったり就職してからだったりすると、大きな迷いをもったままキャリアをスタートさせてしまうことになる。データが集まると僕たちとしてもより貢献できるなと思っているので、積極的にアンケートに答えてもらえると嬉しいですね。

「公教育のスタンダード」となるサービスへと育てていく

武川 誠

―― これから2、3年の展望があれば教えてください。

直近の目標だと、最初にお伝えした、現在開発中のSaaSとメディアサイトをグロースさせていくことです。そのあとに「著名な人物が授業に来てくれるようなサービス」や「奨学金関連のサービス」をやりたいなと思って、構想しています。

日本は体験型学習がとても少なく、就業の意思決定に大きく影響していると考えています。自分であまり考えずにキャリアを決めてしまうことに繋がっているかなと。卓上でしか物事を知らないことも多いですよね。たとえば英語なんかは代表的な例です。

奨学金については、僕の実体験でもあるのですが、だいたい月に2万円ほど返しています。厚労省の調査では大卒の平均手取り20万円で、仮に2年のあいだ、毎月2万円引かれることすると、。2年目からは住民税も引かれます。そう考えると生活はさらに厳しくなる。

人によって収入も違えば生活水準も違う訳ですから、均一な額だと、本人の経済状況を考慮できていない。それを借りやすくて返しやすい形にできればと考えています。

奨学金は投資だと思いますが、そんな中でなんとなく進学先を決めてなんとなく卒業して仕事を決めていると、投資にもなりません。信用スコアや貯蓄額などを踏まえた上で適正な奨学金を月々調整できたら、良いのではないかと考えています。

―― 今後挑戦を続けていくなかで、どんな仲間と出逢いたいですか?

個人的には会社とは思ってほしくないなと思っています。プロスポーツチームみたいでありたい。「上から言われたからその通りにする」ではなく、自分で考えて動ける人が良いですね。自分で意思決定をして動いてほしい。言うのもあとで良いくらいです。

あとは「ユーザーのためになるかどうか」を当たり前のように思考できる人が良いですね。収益化する時も、「儲かるよ」の切り口の人とは合わないなと思います。高校生のキャリア課題に真摯に向き合える人だったら、大切な価値観を共有できると思います。

―― 最後に何か一言あれば、お願いします!

自分の実力を把握できていない人が多いと感じます。地元の友人と話していると、すごく頭が良くて、本当は本人が思っているよりも能力が高くても、なんとなく地元の仕事につく人も多い。他の地方都市でも同じ現状があります。

もちろん自分で納得して選んだ仕事であれば良いのですが、可能性を知らないがために、仕事の選択肢が限られてしまっている現状がある。自分の知らない選択肢や世界のことを知れば、豊かなキャリアが歩めるのではないかなと思います。

そのためにも、まずは受験や就職を考えるシーンで、必ず使ってもらえるような「公教育のスタンダード」になりたいです。教科書と同じくらい普及して、入学したら「まずはこれ!」と教科書を配るタイミングで一緒に渡してもらえたら最高です。